弘前に伝わる漆器。仕掛けベラで凹凸をつくり色漆を四十数回塗り重ねて研ぎ出す「唐塗」の斑紋。あまりの手間から「津軽の馬鹿塗り」。
冬の奥三河、夜通しの霜月神楽。大釜の湯と赤い鬼、そして湯ばやし。「生まれ清まり」を祈る、消えかけの村の祭り。
幕末の薩摩に生まれ、薩英戦争で途絶え、百二十年後に古文書から甦った色被せのガラス。命は断面の「ぼかし」。
百日雪の下の高原で、水辺の草・がまを編む。雪国の冬がつくった、用の手仕事。
大川組子——福岡・筑後川河口の指物木工。釘を使わず、檜などの細い木を組んで麻の葉や亀甲の幾何模様をつくり、障子・欄間・書院を飾る。二百を超える組手を伝える、家具のまち大川の象徴的な技法。
博多の夏祭り。毎年七月十五日、午前四時五十九分の追い山が頂点。起こりは一二四一年の疫病退散の神事。かつて16メートルもあった山笠は、電線を避けて、走る舁き山と見上げる飾り山に分かれた。国重要無形民俗文化財、ユネスコ無形文化遺産(二〇一六)。
筑後川下流の酒どころ。仕込み水は地下200mの伏流水、米は川がつくった平野の米、樽の杉は上流の日田から川を下って届いた。明治31年に85蔵、いま16蔵。
福岡・八女の盆提灯。継ぎ目のない一本の竹ひごを螺旋に巻き、光が透けるほど薄い和紙を貼り、花鳥風月を描く。2001年 伝統的工芸品指定、盆提灯の生産量は日本一。
一七四四年から福島八幡宮に続く灯籠の人形芝居。釘を使わぬ三層の屋台、大坂由来のからくり。国重要無形民俗文化財(一九七七年)。
久留米絣——福岡・筑後平野の手括り木綿絣。阿波藍で染め、投杼で織る。重要無形文化財、日本三大絣のひとつ。
7月第一日曜の早朝、深江の子どもたちが浜に砂の祭壇を築き、八大龍王川之神に海の安全を願う。福岡県指定無形民俗文化財。
畑の暦の外からやってくる春の緑。たらの芽、こごみ、ふきのとう。かつての救荒食は、いま春いちばんの味覚。
阿波藍、天然発酵のすくも建て。いま流通するのは全体の一%ともいわれる。
湯の町の竹。別府で手で編まれる真竹——湯治客の籠から人間国宝の芸術まで。大分唯一の伝統的工芸品。
棚のためでなく、手のために。九州のひと谷で1705年から挽かれる、銘のない鉄黒の土。
岩手の鋳鉄——鉄瓶・急須・風鈴。日本初の伝統的工芸品指定(1975)。一度は消えかけ、いま世界で見直される鉄。
光を通すほど薄く、それでいて強い。岐阜・美濃の清流が漉いてきた、千三百年の手漉き和紙。
小鹿田の土は川へ、川は温泉へ、温泉は食卓へ。関係そのものが、巡る道になる。