
久留米市山川町・王子若宮八幡宮の秋の奉納神事。生竹で組んだ高さ4mの「蜂ノ巣」に多量の花火を仕込み、池の対岸から導火線で一斉点火。火焔と火の粉が蜂の群れのように夜空へ乱れ飛ぶ。久留米有馬藩の砲術師・古川家が土地に伝えた技が起こりで、約360年続く。福岡県指定無形民俗文化財。
火が、蜂のように乱れ飛ぶ夜。
筑後川のほとり、久留米市山川町。王子若宮八幡宮の境内に王子池があり、秋の一夜、その水辺に生竹で組んだ高さ四メートルほどの櫓が立つ。人はこれを「蜂ノ巣」と呼ぶ。直径二・五メートルの竹の巣には、おびただしい数の花火が仕込まれている。
日が落ちると、池の対岸から一本の導火線が引かれ、火が水を渡っていく。蜂ノ巣に届いた火は、無数の花火へ次々に燃え移り、火焔と火の粉をいっせいに夜空へ噴き上げる。その様が、蜂の巣を突いたときに蜂が怒り狂って飛び散るのに似ているから、「動乱蜂(どうらんばち)」という。親蜂、小蜂、爆音、仕掛——地響きのような轟音とともに、火が乱舞する。
もとは、武家の技だった。久留米有馬藩に砲術をもって仕えた古川家が、代々この山川の地に住み、火薬を扱う術を土地の人々に伝えた。武家の砲術が、村の奉納の花火へと姿を変えた——動乱蜂は、その伝承のかたちである。以来およそ三百六十年、地域の手で守り継がれ、福岡県の無形民俗文化財に指定されている。
華やかな打ち上げ花火とは違う。池のほとりで、竹と火薬と手作業だけで、火そのものの荒々しさを神に捧げる。火を扱う怖さと、火に見惚れる心とが、ひとつの夜の中に同居している。




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